こんにちは。 KAKOです。
働くママにとって、子育てと仕事の両立は、悩み多きテーマですね。
先日、朝日新聞厚生文化事業団主催の「障がい児・医療的ケア児と就労」第1回 障がい児を育てながら働く 綱渡りの毎日 というオンラインセミナーに参加しました。
セミナーのトークセッションでは、障がい児・医療的ケア児を抱える方々の就労への困難の数々を知りました。私が思っていた以上に、働くママたちは不安を抱えながら子育てと仕事の両立に苦労していました。
私の娘は重度の障がいをもって生まれました。現在成人していますが、言葉を一言も話すことができません。身の回りのことは、ほぼ介助が必要ですし、安全面の認知が難しいため一人で出かけることはできません。
それでも、母親である私はフルタイムで教員として働き、現在15年目になります。
私の事例が、働くママの誰か一人でも役に立てたら という思いで、この記事を書いています。
ここでは、”常に見守りが必要な重度の障がいをもつ娘を抱えて、私がどうやって子育てと仕事を両立してきたか” をお伝えします。
子育てと仕事に悩むママの一助になれば嬉しいです。
一日のスケジュール
現在、平日に娘を通所施設やヘルパーさんに預けるタイムテーブルはこんな感じです。
時間 | 内容 |
---|---|
母出勤時間~娘通所出発時間まで | 居宅介護(ヘルパーさん) |
自宅~送迎バスまで | 移動支援(ヘルパーさん) |
通所送迎バス乗車 | 通所施設職員(バス添乗員さん) |
通所施設 | 生活介護施設(施設職員のみなさん) |
通所施設バス乗車 | 通所施設職員(バス添乗員さん) |
送迎バス~自宅まで | 移動支援(ヘルパーさん) |
娘帰宅~母帰宅時間まで | 居宅介護(ヘルパーさん) |
1週間で、5~6人のヘルパーさんにお世話になり、フルタイムの仕事ができています。
この他、月に一度の割合で土曜出勤があるため、その場合は2~3人のヘルパーさんに交代で居宅介護や移動支援をしていただいています。
ヘルパーさんを頼む時間は、ほぼ仕事をしている間で、土日は娘と一緒に自宅で過ごしています。
フルタイムで働くまでの道のり
乳児・幼児の頃
もちろん、最初から順調に物事が進んだわけではありませんでした。
そもそも、障がいをもって生まれた時点で、フルタイムで働くことは無理だと思っていましたし、少しでも発達を促したいと通院や療育に時間もお金も使っていました。
「どうして自分だけがこんな目にあうの?」と運命を恨んでみたり、「何がいけなかったのだろう?」と自分を責めたり、将来が見えずに絶望的な気持ちになりました。
今でも忘れられないエピソードがあります。
藁をもすがる思いで受診した病院で、院長先生から衝撃的な言葉をかけられました。
「お母さん、あなたが苦しいのはこの子の将来のことではなく、お母さんあなたの生活が思い描いていたものにならないことが苦しいのではないですか。」と。
( 確かにその通りだけど、この子の将来が心配に決まっているじゃない。あなたに、もし障がいのある子どもが産まれたら、この言葉をかけられてどう感じますか )
怒りで喉までこみ上げたこの言葉をぐっと我慢して、泣きながら帰宅したことを鮮明に覚えています。
同じくらいの年齢の子を見るのがとてもとても辛かったです。
娘が3歳頃までは、仕事はせずに療育センターに母子で通っていました。
幼児期~小学生前半の頃
ステップ1
最初の仕事は料理教室でのアルバイト
当時、積極的に障がい児を受け入れていたプロテスタント教会の幼稚園に娘を通わせていたのですが、保育時間の4時間をフルに使って仕事を始めました。
ほんの少しの時間でしたが、それまでの子育てオンリーの生活と比べて私の意識は変わっていきました。
- ママではなく自分だけの時間
- 社会と繋がっている安心感
- 好きな料理に関われる喜び
- 今後の仕事への意欲
仕事を終えその足で幼稚園にお迎えに行くと、娘の笑顔が新鮮に映り、充実感がありました。
ステップ2
料理教室の講師
料理教室でアルバイトをするうちに、「講師の資格を取り、次の仕事につなげたい」と思うようになりました。
資格をとれば、ゆくゆくは自宅でも教室を開くことができる。
娘が自宅にいてもできる仕事は魅力的でした。
まずは、大手料理教室で講師を始めることに。
料理教室の講師を始めるにあたって、住む自治体の障がい福祉課でのサービスを調べました。
こちらが当時、私が受けたサービスや支援です。
①障がい福祉サービス・地域相談支援
②障がい児通所支援サービス
③緊急一時保護
④移動支援
⑤居宅介護
⑥短期入所(ショートステイ)
①障がい福祉サービス・地域相談支援
■対象 障がい福祉サービス、地域相談支援、障がい児通所支援の利用を希望するすべての方
■費用 利用者負担なし
■窓口 各地域庁舎の地域福祉課
■申請から利用までの流れ
こちらの申請には、時間も労力もかかりましたが、最も受けてよかったサービスです。
現在フルタイムで仕事ができているのも、このサービスの利用計画が希望通りにできたからです。
娘の障がいの状況(80項目)の聞き取り調査と、障がい児相談支援計画案をもとに審査が行われ、障がい支援区分が決まりました。そして、移動支援や居宅介護の支給時間が決定したという流れです。
ここで、必要になるのが「指定障がい児相談支援事業所」です。
住まいの自治体に指定の事業所がいくつかあると思いますが、その中から信頼できる事業所を自分で見つけることが大切です。
障がい児支援利用計画案は、この事業所が保護者と面談をして作成します。
実際に介護に関わるヘルパーさんは、この事業所から派遣されるので、”どんな運営をしているか“ を、よく調べる必要があります。
私はこの事業所に恵まれ、娘の成長とともにさまざまなアドバイスをもらい現在に至っています。
本当に心から感謝しています。
そうは言っても費用がかかるのでは…
自治体によって違いがあると思いますが私が利用した負担額を紹介します
区分 | 通所施設・在宅サービス利用時における負担上限額 |
---|---|
生活保護世帯 | 0円 |
区市町村民税非課税世帯 | 0円 |
課税世帯 障がい者 区市町村民税均等割又は所得割額年16万円未満 | 9,300円 |
課税世帯 障がい者 区市町村民税均等割又は所得割額年16万円以上 | 37,200円 |
課税世帯 障がい児 区市町村民税均等割又は所得割額年28万円未満 | 4,600円 |
課税世帯 障がい児 区市町村民税均等割又は所得割額年28万円以上 | 37,200円 |
上記の表の通り、たとえ上限額が最大の場合でも、この負担で働くことができるのなら、利用した方がメリットが多いのではないかと思います。
また、18歳を過ぎれば障がい者本人の所得となるため、負担額が0円になるケースが多いのではないでしょうか。
私の娘は18歳を超えていますので、現在は負担額は0円でフルタイムで働くことができています。
②障がい児通所支援サービス
私が利用したものは、放課後等デイサービスです。
当時はまだ放課後デイが少なく苦労しましたが、空きを待って娘が小学校中学年から利用していました。
障がいのあるまだ小さな娘を夕方まで預けることに葛藤はありましたが、今ではよかったと思います。
- 娘の行動範囲が広がり、家族以外の方々と関わることに慣れた。
- ママ同士のつながりができたことで、視野が広がったり情報が得られたりした。
- 地域で娘のことを理解してくれる人が増えた。
③緊急一時保護
保護者や家族等介護者の事情により、一時的に家庭における介護が困難になった障がい児(者)を保護する制度です。
家庭委託と特別介護人派遣の2パターンがあり、どちらも前もって登録が必要です。
私は、こちらは頻繁には使いませんが、 ”どうしても” 困ったときは利用しています。
④移動支援
障がいの状況、介護者が介護できない状況を聴き取り支給されます。ヘルパーさんを派遣して必要な移動の介助や外出の支援を行います。
①の計画案の中で、支給量の範囲内で指定の事業所と移動支援の契約を結び移動支援計画書を作成します。
私はこの移動支援を、娘の学校や施設やバス乗車までの送迎と、余暇活動(お散歩やお出かけ)に使っています。
⑤居宅介護
対象は、障がい支援区分に当てはまる障がい者(児)で、身体介護は居宅での入浴、排せつ、食事等の介護と身体介護を伴う通院等介助です。
このサービスは、身のまわりのことが自分ではできない ”重度の障がい” がある場合に受けられます。
娘は、この区分に当てはまるのでサービスを利用させていただいています。
⑥短期入所(ショートステイ)
介護を行う方の疾病その他の理由により、居宅で介護を受けることが一時的に困難になった場合に、指定の障がい者(児)施設などに短期間入所して必要な支援を受けることができます。
対象は支援区分が決まっていて、食事は実費負担。利用日数は連続30日までを限度とし、180日をめやすとします。
私は、今までに一泊二日を2回程度利用しただけです。
その際、一人での宿泊には心配があったため、いつもお世話になっているヘルパーさんに③の緊急一時保護の特別介護人として一緒に宿泊していただきました。
今後もしも、自分が病気になったとき等に備えて慣れておく必要があると考えています。
小学生後半~中学生・高校生・成人
ステップ3
小学校家庭科講師
ここで転機が訪れました。
料理教室講師をしていた私に、知人から小学校の家庭科講師を探しているからやってみないか?と声をかけていただきました。
娘が特別支援学校小学部5年生でした。
もともと、大学で家庭科教員免許は取得しましたが、卒業後は金融で窓口をしていましたので一度も教師として働いた経験はありません。
不安だらけの中、周りの方々に支えられて新しいことに挑戦してみることにしました。
始めてみると、当然ながら苦労も多くありましたが、「ダメでも3年はやってみよう」と心に決めていました。
5年が経ったころ、当時の管理職に教員採用試験を勧められ、試験を受けて正規教員となり現在に至ります。
現在
正規教員
娘は現在、成人して生活介護通所施設に通っています。
上記の支援サービスを引き続き受けながら、私は教員として働き15年目になりました。
正規教員の仕事は、担当教科の他、学級担任、校務分掌、部活動など多忙です。
私は帰宅しなければならない時間が決まっているため、仕事を始めてから10年くらいは、毎週土日に持ち帰った仕事を自宅でひたすら行う生活を続けてきました。
娘がてんかん発作を起こし入院したこともありましたが、同僚に助けてもらいながら仕事を続けることができました。
現在も娘が体調を崩したときは休暇をとりますし、早退もします。
そして、現在は上記の通り、支援サービスを活用し職場の理解を得て、重度の障がいをもつ娘がいても、子育てと仕事を両立できています。
支援を整える方法
自分と子どもの生活をマネジメントする
子育ては障がいがあっても、成長とともに変化します。
子どもの成長段階に合わせ、その時々で働き方を変えながら、適切な環境を整える必要があるのではないかと思いました。
私の場合は、3歳までは専業主婦として娘と共に過ごし、幼稚園で2~3時間のアルバイト、小学校前半で料理教室の講師、小学校後半で家庭科講師、中学生以降で正規教員と、少しずつ仕事のスキルを上げていきました。
その時々で、自分にできることを精一杯やっていたことが、次のステージに繋がっていったと感じます。
また、サービスの支援計画は娘の生活と自分の仕事に無理がないか毎年見直し、適切なスケジュールを管理してきました。
障がいの特性も人それぞれで、私の事例があてはまらないケースも多いと思います。
それでも、考え方として、「長期的に自分と子どもの生活をマネジメントする必要性」が伝わると嬉しいです。
①子どもの成長段階に合わせて、”このくらいの時間だったら預けられる” ”その間にできる仕事をしよう” ”必要なら資格をとろう” など、できることから始める。
②そのために必要な支援を徹底的に調べ、支援サービスを受ける。
③次のステップに進めそうなチャンスは逃さない。
周りの環境を味方にする
【職場】
私は、職場の学校で娘のことをオープンにしています。
理由は、職場に居られる時間に限りがあることを周りに知ってもらいたいからです。
しかし、「周りに甘える」のではなく、その日のうちに終わらなかった仕事は持ち帰りますし、自分に余裕があるときは人の分も引き受けています。
担任したクラスの生徒や顧問をした部活動の生徒にも娘の事情を話します。
生徒たちは、「先生早く帰らなきゃ!」とか「練習に連れてくれば!」と言ってくれます(笑)
物理的に時間に限りがあることを伝え、その分できることを積み重ねておくことで、周りの理解を得られると感じました。
【支援サービス関係者】
これまで、多くの施設や方々に娘の支援や介護をしていただきました。
私の苦しい時を助けていただき、娘を取り巻く環境が広がりました。
フルタイムで仕事をすることに迷っていた頃、ある事業所の代表の方の言葉が私の意識を変えてくれました。
「お母さん、障がいがあっても子どもは年齢とともに自立するんですよ。周りの力を借りて、親がいなくても生活するようになるの。だから、お母さんが働くことを応援したい。」
それまでの私は、娘はずっと私がみると思っていました。
何もできないわが子を手放すことなど考えてもみませんでした。
しかし、親は先にいなくなります。
その時、娘が幸せに生きていけるように、今のうちから環境を整え、世界を広げてあげることが私の役目なのだと気づかされました。
そして、感謝の気持ちでいっぱいになりました。
事業所、ヘルパーさん、通所施設にとって、私と娘は利用者という立場ですが、常に感謝の気持ちをもつことで関係が良好になり、子育てと仕事の両立がしやすくなります。
まとめ
「子育てと仕事の両立」について書いてきましたが、ここまで読んでくださりありがとうございます。
仕事をする,しないに関わらず、障がい児を育てていくには、周りの支援や環境は不可欠です。
経験してみないとわからない複雑な気持ちや将来への不安はずっと続きます。
しかし、子どもの成長に合わせて支援サービスを利用したり、社会や人との関わり方を工夫したりすることで、仕事がしやすくなり暮らしも安定してくると思います。
この記事では、その一例として私の経験を書きました。
娘の障がいは、周りから ”大変だろうな” とわかってもらいやすいものですが、それぞれ事情を抱えながら働いている人はたくさんいます。
当事者にしかわからない辛さをお互いが ”察する” ことができるような社会になるためには、心と体が健康でなければいけません。
私たちが住むこの国が、辛いときに「辛い」と言える環境であり、支援をしてくれる社会であることを期待します。
付け足し
料理が好きな私は、今までたくさん料理をしてきた経験から、”食の力” を実感しています。
旬の食材を多く取り入れたり、なるべく食品添加物が少ないものを選んで食生活を整えると、体が変化していきました。
更に、体だけでなく心も整うようになり、子育てや仕事にも前向きに取り組めるようになりました。
本当に毎日の食事は体とつながっているのだなあと、驚かされました。
このブログでは、食と健康に役立つ記事を発信しています。
子育てをしながら働くママのお役に立てると嬉しいです!
また、Instagramでは食育レシピを紹介しています♪